雪夜庵閑話

俗世を離れ、隠遁生活を始めた団塊世代です

長い間お疲れさまでした

 先月の21日に、50年近く頭を刈ってもらいに通い続けた三条市の佐藤床屋さんが閉店した。 80歳代半ばではあったが、腕も確かで、まだまだ頑張ると言っていたのだが、奥さんの病気で介護が必要となり、急遽決断したという。

 佐藤床屋さんは、母親が昭和4年に開業(父親は鍛冶職人)し、自分は昭和35年3月31日に跡を継いで63年。延べ40万人近くのお客の頭を刈ったことになるという。

 私も、昔三条市内に勤務していた縁で、思えば昭和50年から令和5年まで48年間、年に10回として約480回も通ったことになる。 こうなると、定期的な「佐藤床屋通い」が私の日常に組み込まれて、人生の大事な一コマとなっていたのである。

 佐藤さんは三条に多い典型的な職人気質の人で、ハサミや剃刀といった道具は気に入ったものを何十年も手入れを怠らずに使い込み、仕事場は清潔でいつも季節の花を生け、仕事には若いころから老年になるまで手を抜かず、髪を刈る手の動きも判で押したように変わらず正確でブレがなかった。 穏やかな性格で、いつも散髪が終わった後はコーヒーとケーキが出て談笑するのが楽しみであった。

 今でも耳元で規則的でスピード感あるハサミのカシャカシャと鳴る音が聞こえてくるようだ。 佐藤さん長い間お疲れさまでした。 ありがとうございました。

佐藤床屋さん夫妻(2017年撮影)