この度のドライブ旅行で栃木県益子町の濱田庄司記念益子参考館へ行ってきた。 ここは陶芸家の濱田庄司(1894-1978)が近郷の旧家などを移築し、自分の居宅・作業所とするとともに世界各地からの収集品を自分および世の人の参考にするために展示する拠点として戦前に整備した所で、現在は公益財団法人が管理運営を行っている。
益子の中心地からは少し外れ、山を背後に控えた緑豊かな一帯に江戸から明治・大正期の太い柱に支えられた建物が点在する。 外界と遮断された時空を超えたような所である。
入り口にある展示館では、濱田とバーナード・リーチの若いころからの交流に由来する作品や英国の家具などの収集品が展示されていた。
メインとなる建物は、濱田が内外からのゲストを招く別邸としていた茅葺屋根のどっしりとした家で、江戸末期の建物を昭和17年に移築したもの。
分厚い茅葺屋根は残念ながらメンテナンスが行き届かないようで、ところどころ波うち、雑草が生えたりしているが、内部はきれいに磨きこまれ、世界各地からの収集品が所を得たように納まっている。 30センチはあろうかと思われる柱が梁を支え、喫茶の婦人の話では東日本大震災の時にも危険はなかったという。
喫茶の婦人の父上は、濱田の弟子としてこの家に住み込み、作陶から窯の火の管理、屋敷の掃除まで、この屋敷と一体となった生活だったという。
この参考館もコロナの影響で収入が落ち込み、広大な施設の維持管理には苦労しているようで、「ご寄付のお願い」と言う文書がパンフレットに挟まれていた。
訪ねたのは土曜日のお昼前であったが、来館者は数えるほどで、おかげでじっくりと楽しむ事ができた。 その一方であまりにも静まり返っていることが気になった。
ここは濱田庄司の精神を今に伝える施設であり、ぜひ維持してもらいたいものであるが、一つ感じたことは、古きを伝える施設であっても、現代人にアピールするものを常に考え企画していく必要があり、古いものを維持するだけでは新たに人々を引き付けることは難しいのではないだろうかということである。
濱田庄司、バーナード・リーチ、河井寛次郎、柳宗悦らの芸術はライフスタイルとして現代にも生きている。 それに共振を覚える若い人達も多い。 この参考館も濱田らのライフスタイルを現代に生かし伝える企画をもっと打ち出していくことで、新たな可能性が開けて来るのではないだろうか。