昨日は、高崎市美術館で開催中の高島野十郎(たかしま・やじゅうろう/1890-1975)展を見に行ってきた。 コロナ禍に入って以降、初めて新幹線に乗ってみたが、ガラガラで気の毒なくらい。
高崎駅前の高崎市美術館は、65歳以上は居住地を問わず入館料無料という気前の良さで、これだけの作品を集めた美術展がタダとは何とも申し訳ないような気持になる。
さて、私が高島野十郎に惹かれたのは、この「蝋燭」という作品によってである。
大正時代に書かれた作品で、暗闇の中で自分の心を見つめているような内省的な炎が印象的である。
昨日見た絵の中で特に印象に残ったのは、次の「絡子(らくす)をかけたる自画像」(1920)と「からすうり」(1935)で、いずれも精緻な筆遣いで光と影を描いている。
この二つの絵を見て思い浮かんだのは、なぜかアルブレヒト・デューラーの「自画像」(1500)であった。 同じような雰囲気が感じられるのである。
この後さらに展示を見て行って、1929年からのパリを拠点としたヨーロッパ滞在時の作品の説明の中で、画家はかねてからデューラーに惹かれていたが、ドイツではなくフランス、スペイン、イタリアへ向かったと書かれているのを見つけて、やはりそうかと思った。
晩年の作である「月」(1962)を見ても、この画家は光を通して闇を描いてきたのだと思うのである。