我が名はジェームス。 年寄り亀である。
この家の子が小学校を卒業するときに、クラスで飼っていた我を持ち帰り、それ以来すでに30年。 雪夜庵の片隅を仮寓として世を経て来た。
雪夜庵主人は、明治文豪風に我をゼームスなどと呼んで、もっぱら身の周りの世話をしてくれている。
季節のいい頃は、庭を探検し、ダンゴムシを片っ端から捕まえてはパリパリと食べるのが、我が最上の楽しみである。
数年前までは、クルちゃんという犬の友達がいて、日当たりのいい我が仮寓に頭をくっつけて昼寝するのが日課で、我も目を細めてクルちゃんを見守ってやっていたものであった。
雪夜庵一家の日々は流れていくが、どうやら我は「亀は万年」というとおり、まだまだ長生きしそうである。