先週末は、久しぶりに信州塩田平に旅をした。 長岡は暗い雨がザーザーと降る中を出かけたが、長野県に入るとすっきりと晴れて、晩秋の寒い青空に白い雲が流れ、旅に出た気分を高めてくれる。
塩田平のお寺巡りはまず青木村の大法寺から。
大法寺の三重塔は里山の小高い山裾にひっそりと建っていて、寺に向かう上り坂を歩いて登って行くと、信州の古寺巡礼といった風情である。
大法寺は天台宗の古刹で、三重塔は正慶二年(1333)建築の国宝である。 この辺りは街道からすこし奥まっているせいか観光客もあまり見えず、晩秋の最後の紅葉の中で静まり返っている。
搭も堂宇も木々に隠れて近づかないと見えないが、きっと昔はこの塔が山裾の岡の上にすっきりと建っている姿が遠くの野や街道からも望まれたことであろう。
当日の宿は、別所温泉の花屋旅館にした。 離れの客室をつなぐ橋掛かりのような華奢な渡り廊下が浮世離れしていて、旅の気分を高めてくれる。 ただし、夜、大浴場に行くときなど恐ろしく寒い思いをした。
翌朝、朝食を食べながら外を見ると、薄日が差しているのに、白いものがチラチラと光り輝いて舞い落ちている。 この冬初めて見る雪だ。
二日目は、宿の近くにある曹洞宗安楽寺へ。 温泉街の近くにありながら、禅宗の寺らしく清冽な気が満ちている。 寺の裏手の山には鎌倉時代のものと言われる国宝の八角の三重塔が建つ。 山の下から見上げると八角の屋根の重なりが覆いかぶさって来るような感じがする。
この塔は大法寺の塔などと違い、二階、三階とも高欄がなく、壁に小さく窓が穿たれている。 このことが、キノコのような屋根と相まって開放感がなく、重苦しい感じを醸し出している。
お寺見物の後は、気分を変えて戦没画学生の作品を展示する無言館へ。 晩秋の落葉樹の丘を乾いた風が吹いている。
今回の旅は紅葉の盛りは過ぎていたが、お天気に恵まれ、どこも人の出は少なくひっそりとして心静かに晩秋の信州塩田平を味わうことができた。
帰りはいつもの戸隠ランプへ寄ることにし、上信越道を北へ向かう。 コロナのおかげで今年初めての訪問である。
ところが、長野ICで高速を降りると、長野市を境に秋から冬へと空模様は急変し、戸隠バードラインは雪が降り積もっているではないか。 スタッドレスタイヤを履いた4WDで来たのでスタックすることもなく戸隠中社まで登ったが、道中行き過ぎる車も少なく、暗闇の雪道ドライブは1泊2日の信州の旅を締めくくる思い出となった。